JPCA Show 50周年記念 歴史を語る注目電子回路技術
これまでに誕生した技術のうち、出展者・会員企業から注目の電子回路技術を公募し、
選考委員会にて選出した技術をご紹介いたします。
基板・工法
メインフレーム/スーパーコンピューター向け超高多層基板
富士通のメインフレームコンピュータFACOM M780に42層ガラスポリイミド多層プリント配線板、富士通のスーパーコンピュータ FACOM VP-2000に61層ガラスセラミック基板などを採用。1985年から42層を量産開始。
1987年、富士通「高密度42層プリント配線板の開発と量産化」第34回大河内賞(技術賞)受賞。
部品内蔵基板
携帯電話等で開花。メインプレーヤは、日本CMK、クローバー電子、DNP、メイコー、太陽誘電、TDK他。
ビルドアップ多層プリント配線板
メインプレーヤは、日本IBM(SLC)、日本電気(DVマルチ)、日本ビクター(VIL)、田中貴金属他。
SLCはフォトビアによるビルドアップの元祖(1991年)。欧米ではHDI(High Density Interconnect)と呼称される。
バンブ接続法/一括積層
3次元実装を可能とする部品内蔵技術も実用化されてきている中で生まれた日本発信の技術。
B2it(1996年/東芝)、ALIVH(1996年/松下電子部品)、PALAP(2008年/デンソー)他。
MCM(Multi Chip Module)基板
一つのパッケージやモジュールに複数の半導体チップや素子を実装、あるいは内蔵した基板のこと。メインプレーヤは、IBM、富士通。
ICパッケージ基板
ICチップと一体となって機能する重要な部品であり、半導体の進化に合わせて付加価値がさらに高まっている。日本発信の技術でメインプレーヤは、イビデン、新光電気工業、富士通(レザービアによるビルドアップ基板を開発)他。
プラスチックBGA基板
BGA(ball grid array)とは、半田ボールを格子状に並べた電極形状をもったパッケージ基板のこと。セラミックから有機基板に代替したのをP-BGA(プラスチックBGA)と呼称し、メインプレーヤ(当時の開発・製造メーカ)は、イースタン、AMKOR。
薄物多層プリント配線板 0.6㎜ 4層板
1989年、ソニーのパスポートサイズのカメラ一体ビデオカメラ CCD-TR55が初で、重量 790gの軽量化を達成。
以降、各社のカメラ一体型VTR、ヘッドホンステレオ、デジタルカメラなどの民生機器に薄物多層プリント配線板が採用されるようになる。
フラットプラグ
樹脂穴埋。スルーホールを樹脂埋めし、スルーホールを保護する。表面を平滑に仕上げることにより部品実装を妨げない。メインプレーヤは、野田スクリーン。
パッドオンホール(高密度実装)
貫通樹脂埋め基板(PAD on HOLE)とは、層間を電気的に繋ぐためにスルーホール(スルービア)を配置したいが、そのスペースが無い場合に、スルーホールに樹脂を埋め込み、その上にパッドを設けることによってスペースを確保したプリント基板のこと。ヘッドホンステレオ、カメラ一体型VTR、サブノートパソコン、携帯電話などに採用された。
高周波対応基板
高周波信号の伝送(1GHz以上の周波数)に用いる基板であり、スマホやIoT、通信・ネットワーク機器、自動運転など、さまざまなジャンルで需要が増加している。LCP、PTFE、PPE他。
プリント配線板(ゴム版法)
1965年代、東京芝浦電気がゴム版法によるプリント配線板を開発し、ラジオに利用された。
ダイスタンプ法
1966年、藤倉電線による銅箔を積層板に貼り付けて、配線部分をダイスタンプで切りぬき余分な銅箔を除去する。
新スルホールめっき法によるプリント基板
1968年に銘光工業が開発。無電解めっきだけで所定の膜厚と電解めっきと殆ど変わらない精度を確保した画期的なエレクトロレススルホールめっき法を完成した。
新銅スルホール・ノンカタライズ法
1971年にサンワ化学工業、室町化学工業が開発。同工法は、特殊合成樹脂を開発したことにより工程を大幅に短縮した厚付無電解銅めっき法。
MFB(マルチ・ファンクション・ボード)多機能基板
1970年にタムラ製作所が開発。従来のエッチングによるプリント配線板の回路形成と各部品挿入、部品挿入後のはんだ付を不要にし、回路形成と抵抗の実装を同時に成型した多機能基板。
エニーレイヤー工法・構造
ビルドアップ基板のレーザービアをめっきで充填して直上に接続するエニーレイヤー構造・工法。フラットプラグやパッドオンホール、新スルーホールめっき工法によるプリント基板、フィルドビア用銅めっき液の技術に関連。
材料
RCC(Resin Coated Copper)
ビルドアップ用層間絶縁材料(樹脂付き銅箔、銅箔付き絶縁シートとも呼称される)。メインプレーヤは三井金属他。
キャリア付極薄銅箔
18μmtのキャリアと呼ぶ銅箔の表面に剥離層を設け、1.5μm~5μm厚の極薄銅箔を析出、MSAPなど微細回路の形成には不可欠。メインプレーヤは三井金属ら
BT(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)
ビスマレイミド・トリアジン樹脂の略称。三菱ガス化学が開発した熱硬化性樹脂で、高い耐熱性とすぐれた電気特性が特徴(Baerから技術導入)。
Bell研でイオンマイグレーションに優れることが公表され、注目される。1976年製品化された。
ABF(味の素ビルドアップフィルム)
味の素ファインテクノによる層間絶縁材料。高性能パッケージ基板に欠かせないものである。
ハロゲンフリー銅張積層板(FR-1、CEM-3、FR4)
東芝ケミカル初(紙フェノール FR-1/1992年、コンポジット CEM-3/1995年、ガラスエポキシ FR-4/1997年)。
環境に配慮した基板材料で、環境調和型技術の一つとして世界に拡がる。
開繊クロス
開繊クロスと含浸技術によりボイドレスプリプレグが可能となった。メインプレーヤは、日東紡、旭シュエーベル。
PSR4000R(ソルダーレジスト)
プリント配線板(PWB)の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となるインキ。太陽インキ製造によるもの。
ドライフィルムレジスト(回路用レジスト)
片面・両面・多層基板の回路形成に使用されるフィルム状のエッチングレジストである。メインプレーヤは昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)、旭化成エレクトロニクス。
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)ドリル
低摩擦係数のDLCコートと特殊な溝形状により凝着が少なく、切りくずつまりが発生しにくい。複雑な形状のドリルである。メインプレーヤはユニオンツール。
2層型フレキシブル銅張積層板(FCCL)
スマホに欠かせないFPC技術の1つであり、接着剤不要である。メインプレーヤは、日鉄ケミカル&マテリアルのエスパネックスで2層型の生産に関しては第62回大河内賞「大河内記念生産特賞」(2015年)を受賞している。
表面処理剤(粗化処理)
メインプレーヤは、メック、四国化成。
銅めっき(電解・無電解)
パッケージ基板用でのメインプレーヤは、上村工業、アトテック他。
無欠点・極薄銅張積層板の製造技術
1991年に誕生。メインプレーヤは、東亜合成化学工業。
フィルドビア用銅めっき液
ビルドアップ基板のレーザービア部分を、完全に銅めっきでフラットに埋めるフィルドビア構造形成のためのめっき液を開発。スルーホールなしで直上にビア接続するエニーレイヤー構造が実現するために必須なめっき液。メインプレーヤは、奥野製薬工業、JCU他。
電磁波シールドフイルム
携帯電話、スマホ等で、通信回線の安定性向上のために開発された電磁波シールドフイルム。現在は多くの携帯スマホで適用されている。タツタ電線が開発企業であり、世界シェアトップ。
装置
VCP(垂直連続搬送)銅めっきライン
1997 年に世界に先駆けて特許化、実用化した。均一性および生産性を向上した電気銅めっきが可能となり、現在はこの銅めっき装置が国内外の主流となっている。メインプレーヤは、ケミトロン。
2流体エッチング装置(スーパー/ハイパーエッチング装置)
2012 年に4 か国で特許化(日本、韓国、台湾、中国)、実用化した2流体ノズルを併用したエッチング装置(Hyper Etching)。サブトラクティブ法におけるパッケージ基板等の微細配線形成の主流になっている。
通常はMSAP(三井金属の極薄箔 MicroThinを採用)の極薄銅箔を用いて変形型SAPを使う(L/S=30μm/30μm)。
ケミトロンの技術は海外の大手ユーザが利用。
真空プレス
1986年、1X1.2mの大形30段プレスでフレーム方式で真空成形を適用して東芝ケミカルで量産化。真空状態にて成形が可能であり、主に製品への空気混入による不良率の改善に大きな効果が期待でき、内層回路入り銅張積層板の大量生産に採用されるとともに多層プリント配線板の生産量増加に伴い、プレス自体をボックスで囲む方式で進化する。メインプレーヤは、名機製作所、北川精機、日本製鋼所。
分割投影露光装置(UX-5シリーズ)
メインプレーヤは、ウシオ電機。現在でもハイエンドパッケージ基板の露光には必須の装置
DI機(ダイレクト露光機)
回路形成に際し、コンタクト露光機からの転換、ダイレクト露光の登場(2000年半ば)。メインプレーヤは、オーク製作所、アドテックエンジニアリング、SCREEN PE ソリューションズ、オルボテックら。
基板穴あけ用レーザ加工機
メインプレーヤは、CO2レーザー穴あけ機は三菱電機(2017年 全国発明表彰「特許庁長官賞受賞」)。UVレーザー加工機はビアメカニクス(FCBGA基板向けではデファクト)。レーザを利用しMicroviaの形成に欠かせないもの(100μ径以下)である。
プリント基板除塵装置(クリーンローラー)RY-102
1990年にレヨーン工業が開発。プリント基板に損傷を与えず、非接触で、かつ効率良く除塵できる。
ロータリースクリーン印刷システム
1969年にニューロング精密工業、大日本印刷が共同開発。同システムはインクやスキージーを内蔵したシリンダ状の版を回転しながら印刷する方式で版と被印刷物はインクが回転する箇所で線接触し版離れのよいコンタクト方式の印刷ができる。
特別枠
メタリコン法吹き着け配線方法
1936年であり50年以上経ているが、画期的技術。宮田製作所によるもの。特許もあり、米国の特許係争があった際、この技術が日本を守った(勝訴)。ラジオにも使用された実績がある。